それぞれの咀嚼や嚥下の能力や、病気の有無、その病状によっても適したメニューが違います。
例えば噛む力の弱くなった人には柔らかい介護食を用意します。しかし気を付けなければならないのは、柔らかすぎてはいけないということ。
噛む力が残っているのであれば、その力を充分に使うことが健康を保つことに繋がるからです。もちろん無理をして硬い食事を召し上がる必要はありません。
しかし、よく噛んで食べた方が食材のうま味をより強く感じることができるはずです。さらに咀嚼によって脳が活性化し、認知症の予防にも効果があるという研究結果もあります。しかし、硬いからと安易に食材を刻んでしまうのもあまりおすすめできません。
刻むことで口の中でまとまりづらくなった食材は、唾液の分泌が低下している場合は特に飲み込むのが難しいものです。咽たり(むせたり)、誤嚥の原因になりかねません。
介護食ではとろみのついた餡をかけて仕上げるなど、口の中でまとまりやすい工夫が必要です。
さらに噛む力が弱まってしまった場合、ミキサーにかけるなどして食べることになります。
しかし細かくペーストのようになった食事は見た目も味も全くの別物で、粉砕されることで食材のおいしさよりも、臭みやえぐみを強く感じてしまうこともあります。
病院などではムース食という、見た目も元の食事にそっくりな形で提供されますが、調理は難しく、一般家庭にはあまり普及していないのが現状です。
でも、心配なのは咀嚼や嚥下能力だけではありません。
年齢を重ねることで健康面での不安も増えてきますよね。中には食事制限が必要な病気もあります。糖尿病、腎臓病などはその主な例でしょう。
糖尿病の介護食では、砂糖や、体内で糖に変わる炭水化物を控えなければなりません。炭水化物はご飯やパン、麺類などの主食やイモ類に多く含まれていますので、病状によっては主食の量をかなり厳しく制限されるでしょう。
料理の味付けにも砂糖を控えますが、慣れ親しんだ味付けが失われると思うと寂しいものです。
腎臓の病状によっては更に、生野菜などに含まれるリンやカリウムも制限し、人工透析になると水分の摂取量も厳しく管理されることになります。逆にカロリーは多く摂らなくてはなりません。
粉飴という甘さは控えめで高カロリーな栄養補助食品を、調理やおやつに使うこともできますが、家族の食事と一緒に作ることが難しくなるのが難点です。
また噛む力や病気の有無に関わらず、食事の見た目はとても大事になります。食事の時間を楽しみにしているお年寄りはとても多いのです。
彩り豊かでおいしそうな食事を、まずは目で見て楽しむこと。介護食であっても食事を楽しむことは失われてはなりません。
在宅で介護をされている場合、介護食はご家族などの介護を担っている人が用意することになると思います。
そうなると家族構成や好みによって、様々な種類を作らなければならない場合も少なくありません。
要介護の認定によっては介護ヘルパーさんに食事の準備をしてもらうことも出来ますが、介護度によって得られる介護サービスの量は決まっています。毎日3度の食事となると、全てをヘルパーさんにお任せするのは難しいでしょう。
嚥下が困難になると、汁物やお茶などの水分にはとろみをつけますが、とろみの濃度の調整はなかなか難しいものです。
温かい汁物には片栗粉でとろみをつけられますが、冷たい飲み物には片栗粉は使えず、市販のとろみ剤を購入しなければならないでしょう。
ミキサーにかけてしまうと味や見た目の変化が著しく、食欲の低下を招きますし、ムース食はまだあまり一般家庭には普及していません。また野菜などを柔らかく加熱しようとすると、彩りも損なわれてしまいます。
柔らかく食べやすい食材ばかりを選んでいると、マンネリ化も心配の種になります。硬く食べにくいからと避けがちなお肉や魚などは、体に筋肉を維持するのに大切なタンパク質を多く含んだ食品でもあります。
栄養不足は褥瘡(じょくそう)の要因のひとつでもありますから、色々な栄養素をバランスよく摂取しなければなりません。
そこに食事制限が加わってくると事態はもっと深刻になります。主食の量を測ったり、塩分濃度を調べたり。カロリー計算も必要でしょう。そんな風に苦労して介護食を作っても、制限食や病気療養食は味気なかったり…。
病状や、咀嚼や嚥下の力に合わせた介護食を家庭で作るには、大変な労力がかかります。ましてや家族の食事も用意しなければならないとしたら…?その負担は想像以上のものでしょう。
食事のお世話だけが介護ではないことは言うまでもないことでしょう。
排泄ケアや入浴の介助、転倒を防止するために歩行の際には付き添いが必要な場合もあります。褥瘡の予防のための体位変換や、トイレ誘導などは夜間も続きます。
朝晩の着替え、水分はちゃんと摂れているか、爪は伸びていないか、室温は快適か…。
そんな細々とした気遣いも多く、挙げればきりがありません。
介護施設では何人もの職員が交代で関わる介護のほとんどを、在宅介護では家族の方が担うことになります。
その負担の大きさは想像に難くありません。介護の傍ら日々の家事をこなし、中には育児や仕事を続けている方もいます。
また、少子化や核家族化がすすむ現代、60歳以上のお年寄りが親や配偶者などの介護を担う老老介護の問題も深刻です。
介護疲れにより介護者が入院したり、介護者自身に介護が必要になってしまうことも。さらに、精神面でも、先の見えない不安や孤立感を抱えて悩んでいる人が多くいます。
責任感が強く、介護を頑張っている人ほど上手く他者に頼ることができず苦しんでいるのです。助けを求めることは恥ずかしいことでも無責任なことでもありません。肩の力を抜いて、時には行政や民間のサービスを利用してみましょう。
レンジで温めて手軽に食べられる、介護食の宅配を使うなどして、自分の時間を作るのも良い気分転換になります。
家庭で用意するのは大変な介護食ですが、気軽に宅配食を利用することもできます。
栄養士が用意したメニューは種類が豊富で、彩りも豊か。日替わりなのでマンネリの心配もなく、栄養も豊富です。
またやわらかダイニングや食宅便では、それぞれの咀嚼や嚥下の力に合わせた3種類の柔らかさを選べます。
食事の見た目を損なうことなく、おいしく食べやすい工夫を施されたメニューは家庭では手間のかかるもの。宅配食を利用すれば、レンジで温めるだけで、火を使わず用意することができます。
お弁当のトレーが味気なく感じる場合は、温めたあとご家庭のお皿に盛りつけていただくと、より見た目にもおいしくなります。
手間や時間がかからないので、介護を担うご家族の精神的、肉体的な余裕にも繋がります。
もちろん家庭では管理の難しい糖尿病や腎臓病に合わせた病気療養食を選ぶこともできます。
スタッフによる試食も行われていますので、おいしさはお墨付き。食べる喜びや楽しみを存分に感じていただけることでしょう。
また、冷凍で3か月以上の長期保存が効くため、料理を作るが難しい時のために冷凍庫に常備しておくという使い方もできます。
介護は決して辛いだけのものではありません。
ただ多岐に渡る介護や、休めない日々の家事に追われて余裕を無くしてしまいがちなのも事実です。
宅配食を利用することで肩の力を抜いて、大切な家族との食事を、心から楽しんでみませんか?